夏の終わりにまといたいグタールの香り6選

こんにちは、セレスの香水ライター凛です。まもなく梅雨が明け、夏本番の到来ですね。 先月は夏場でも身に付けやすいフローラルの記事を執筆させていただきました。

今月は、今の季節から夏の終わりにかけてまといたい一押しの香水ブランド、40年以上もの歴史ある老舗「グタール」をご紹介いたします。 グタールは香水ファンの間で根強い人気なのはもちろん、軽やかで涼し気な作品も多く、オフィスやプライベート問わず使いやすいところもあり、香水ビギナーの方にもぴったりなブランドです。

 

グタール(旧アニックグタール)とは?

グタールは1981年に創業者アニック・グタールによって、自身の名を冠した「アニックグタール(現グタール)」として始まった40年以上続く香水の老舗ブランドです。

アニック・グタールは青春時代をピアニストの道に捧げ、ファッションモデルとして活躍し、病気になったのち自分が最もやりたかったことをするべく香水の道へ従事し、最期まで香水に人生を捧げました。彼女の芸術家そして表現者としての在り方と、何にも縛られずに愛するものを追究する生き方は、ひとつひとつの作品にも息づいています。
1999年アニック亡き後に母親が長年信頼してきたビジネスパートナーのイザベル・ドワイヤンと共に、彼女から香水を学んだ愛娘カミーユ・グタールがアニックグタールを引き継ぎました。その後、2018年9月5日にブランド名を「アニックグタール」から「グタール」へ変更、リブランディングを行い、現在に至ります。

英国では女性のファーストネームである「アニック」を取ることにより、元々あったユニセックスの作品を男性にも抵抗感無く触れて貰いやすくする。ボトルやパッケージの美しさは大切だけれど、最も大切なのは中に入っている香水という創業者アニックグタールの理念を大切に、ボトルのデザインをモダンな印象に変更するなど、ブランドを時代の流れに合わせます。
が、一方、香水で一番大切な「香り」の製法や原料へのこだわりは変えないなど、大切にすべきものを見極めて、創業当初から変わらない「アニックグタール」が今でも受け継がれています。

 


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グタール(旧アニックグタール)の夏場に合わせてお勧めしたい6本

グタールのなかでも夏に合わせた作品を、女性向けのものからユニセックスのものまで幅広くご紹介いたします。
また、前半の3本はオードトワレ、後半の3本がオードパルファムとなっているので、是非こちらも作品選びのご参考にどうぞ。

 

1.Goutal – Petite Cherie (グタール – プチシェリー) フローラルフルーティー オードトワレ

主な香料: ペア、ピーチ、ムスキーローズ、バニラ、ホワイトムスク

最初にお届けするのは、母アニックから愛娘カミーユへ最期に贈った香水のラブレター。「プチシェリー(愛しの我が娘)」とアニックが母親の顔に戻る時にカミーユへ愛称として呼びかけたままの作品、プチシェリーをお届けします。

付けたて香るのは甘くて瑞々しい洋梨と桃の香りです。大人の女性らしさとか色気だとか、そういったものはなく、寧ろ生まれたての赤ちゃんのようなイメージがしました。無垢な甘い洋梨と桃の香りです。フルーティーフローラルにありがちなくどい甘さは一切ありません。果物そのものの甘さです。甘くて幸せな時間が流れて、ただただ母親が子供の誕生を祝福している様子が伝わってきます。付けたてから肌に馴染んで落ち着いてくると、幼少期の女の子が無邪気に明るく笑っているそんな姿も浮かんできます。

少しずつ繊細なムスキーローズが顔を出してきますが、これがとても愛らしい。明るく可憐に少女が子供から大人の階段を上り始めるような、そんな成長を喜ぶ母親の姿も見えました。
ラストはバニラの持つ温かみとホワイトムスクの独特なパウダリー感が香りを肌に馴染ませていきます。そして繊細に優しくずっと香り続けた最後は、肌そのものの香りのようになっていきます。

プチシェリーは20代前半だったカミーユに捧げられましたが、娘が生まれた時から大人の女性に成長していく歓び、母親としての幸福な時を込めた作品です。いつまでも変わらない母親の愛がずっと残るこの香りは決して、死期を悟った嘆きや哀しみの香りではありません。喜びと光に満ち溢れた愛を込めた「プチシェリー(愛しの我が娘)」です。

 

2.Goutal – L’ile au The (グタール – イル オ テ) ティーシトラスグリーン オードトワレ

主な香料: マンダリン、マンダリン・ブロッサム、オスマンサス、ティーアブソリュート(セイロン&マテ)

2本目にお届けするのは、カミーユ念願だったグタール初の夢を叶えたティーフレグランス。お茶の持つ独特な気品ある豊潤さとアグレッシブ過ぎない爽やかさが絶妙にマリアージュした、グタールの作品としてもティー系統の作品としても愛されている、「お茶の島」ことイルオテです。

最初にやって来るのはティーアブソリュートのお茶の葉の気品ある青さとマンダリンの優しい柑橘の爽やかさです。マンダリンのシトラス感は柑橘系の中でも優しく穏やかなポカポカとしたお日様のようなイメージです。レモンやオレンジといった無邪気に子供がはしゃぐようなシトラスではありません。
次第に柑橘のマンダリンは飛び去って、マンダリン・ブロッサムやオスマンサス(きんもくせいの花)といった花々が香り出します。フローラル感が主役に躍り出るというよりはあくまで主旋律はティーで、伴奏のようにティーの独特なグリーンの苦味をまろやかにして、華やかさで彩るように寄り添います。
終わりはほんのりとホワイトムスクを思わせるような柔らかなパウダリー感が添えられて、優しい余韻を残しながらそっと立ち消えて、最初から最後まで心を和ませてくれる作品です。

カミーユがイザベルと韓国にある火山島の済州島に訪れた時に、広がる茶畑と果樹園に栽培されていた蜜柑が一緒に佇む姿にインスピレーションを受けた作品ですが、柑橘とティーがここまで調和するものかとカミーユの気持ちが時と場を超えて伝わってくるような「イルオテ(お茶の島)をぜひ味わっていただきたいです。

 

3.Goutal – Ninfeo Mio (グタール – ニンフェオ ミオ) グリーン オードトワレ

主な香料: シチリア産レモン、ガルバナム、フィグ、レモンツリーウッド

3本目にお届けするのは、ギリシャ神話に登場する世界の西の果てにあるニンフ(妖精)達が暮らすヘスペリデスの園をテーマにイチジクを主軸としてカミーユとイザベルが創作し、現実にある「世界一ロマンティックな庭園」と謡われるローマ郊外ニンファ庭園を訪れた時、自分たちが表現していた香りが漂っていたという、「ニンフェオミオ(私のニンフェウム)」です。

始まりはイチジクの葉が優雅に甘く登場し、周りを青々しく生い茂る緑の苦いガルバナムと庭に差す木漏れ日のようなレモンが一緒に香ります。次第に柑橘が飛ぶからか、青々しい草の苦味が強くなり、元々苦味がかなり強いガルバナムだけではなくニンファ庭園に咲き誇るハーブのラベンダーを思わせる苦さと甘さも漂います。ラストは青々しいグリーンのえぐみが落ち着き、イチジクの完熟した果実のような甘さが際立つ幻想的な雰囲気のまま残ります。

人の手が加わっていない鬱蒼と生い茂る植物の緑をガルバナムがこれでもかと表現し、柑橘のレモンがほんのりと添えられている程度だからか、悪目立ちせず庭の日差しのように舞台装置として佇み、そこにラベンダーが花を飛び交う甘い蝶々の羽ばたきを思わせ、主役のイチジクはニンフェウムの庭の主人である妖精そのもので、イチジク独特のミルキーな甘さが妖精のロマンティックさや幻想的な雰囲気を醸し出している景色が浮かんでくるという、魅惑的なまさに私のニンフェウム、「ニンフェオミオ(妖精の庭)」でした。

 

4.Goutal – Songes (グタール – ソンジュ) オリエンタルウッディーフローラル オードパルファム

主な香料: フランジパニ、タヒチ産ガーデニア、マダガスカル産イランイラン、サンバックジャスミン、ブルボンバニラ、サンダルウッド、クミン、アンバー

4本目にご紹介するのはカミーユとイザベルの作品で、フランジパニを中心としたイランイランやジャスミンサンバックなど南国の花々とオリエンタルなウッディスパイスが交わった楽園。「ソンジュ」は白昼夢(夢)を意味しますが、同時にカミーユ自身の調香師の夢を象徴した作品でもあります。カミーユが最も誇りに思っている香りであり、完璧な夕暮れである「光り輝くような暗さを持つ香り」を表現したシングルノート、「ソンジュについてお届けします。

はじまりからフランジパニことプルメリア、タヒチ産のガーデニア、マダガスカル産のイランイラン、ジャスミンサンバッグとねっとりとした南国の花々の香りに圧倒されます。かなり濃厚でむせ返るような甘さに楽園の南国の島にトリップするような白昼夢そのもののようだと感嘆します。
それでも少し時間が経つと花々のむせ返る甘さのなかに、お香のような香りが漂っていることに気づきます。最初は強烈な花々が白昼夢のお日様のように輝いているのが、次第にサンダルウッドを中心に温もりあるスパイシーウッディーによる南国の夜の神秘的なムードに切り替わります。まさに「光り輝くような暗さの香り」です。

実はソンジュですが、カミーユにとって今の道に進んだ「夢」の香りでもあります。カミーユが母親の死後半年の頃に、母のスカーフから生前の香りが漂っていることに気づき、この香りはカミーユが香りの仕事をする決意の第一歩でした。その後、心の傷をいやすことも兼ねて訪れた南国の島で「香り」と再会し、スカーフの香りがプルメリアだったことが解りました。

彼女はとても癒されたと、5年の歳月をかけて光り輝くような暗さを1本の作品で表現し、ソンジュを完成させました。「光り輝くような暗さ」には南国の島の情景というだけではなく、同時にこれから進もうとしている夢の先を歩んでいく、カミーユ自身の決意が込められていたのかの知れません。
そんな「ソンジュ(夢)」の香りをお届けいたしました。

 

5.Goutal – Eau D’Hadrien (グタール – オーダドリアン) シトラス オードパルファム

主な香料: シチリア産レモン、シトロン、グレープフルーツ、グリーンマンダリン、ベルガモット、サイプレス、ジュニパーベリー、イランイラン、ムスク

5本目にご紹介するのは、アニックが1981年に2本目に調香したブランド「アニックグタール」初の大ヒット作であり、「グタール」となった現在も時を超えて愛され続けるマルグリット・ユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想録』をテーマにした「ハドリアヌスの水」という名を持つ傑作、「オーダドリアン」です。

開幕からレモン、シトロン、グレープフルーツ、グリーンマンダリン、ベルガモットと5種類もの柑橘を代表する香料が、それぞれの個性を伴って吹き抜ける風のように押し寄せます。また、きりっとした樹木のサイプレスとハーバルなジュニパーベリーが躍動感を与えるほか、イランイランをほんの少しだけ隠し味のように用いているからか、イランイランから発する甘さではなく、柑橘の甘さだと良さが際立つような使い方が美しい。
そしてラストはムスクのみで元々のシトラスの香りを損なわないように、重たく強い香料は一切いれていない。とても単調なよくあるシトラスの香りだとは言えず、繊細で美しい調香なのだと感銘を受けるばかりです。

さて、本香水のテーマである『ハドリアヌス帝の回想録』は60歳のローマ皇帝ハドリアヌス帝が、次期皇帝に定めたマルクス・アウレリウスに対して書簡にて自身の若かりし頃について回想するように告白するという内容です。私には最初から最後まで爽やかで快活、ずっと躍動感に満ちたようなハドリアヌス帝そのものに感じます。
ラストには香りが落ち着いて和らぐもののガラリと香りそのものは変わらず、これは晩年になっても五賢帝と謡われたハドリアヌス帝が今まで築き上げてきた全盛期そのものなのだと思います。まさに「オーダドリアン(ハドリアヌスの水)」はハドリアヌス帝の回想を、そのままハドリアヌス帝と一緒に振り返る香りです。

 

6.Goutal – Bois D`Hadrien (グタール – ボワ ダドリアン) ウッディ オードパルファム

主な香料:レモンツリー、アイビー、サイプレス、シベリアンパイン、スパイスノート

最後にご紹介するのは、5本目にご紹介したアニックの傑作、オーダドリアンをオマージュしてカミーユが伝説の香りを継承した作品、シトラスではなくウッディの「ハドリアヌスの森」を名を持つ新解釈、「ボワダドリアン」です。

はじまりは柑橘のような樹木のレモンツリーがほのかなシトラスさも添えて爽やかに香ります。続く植物アイビーのグリーンノートやサイプレス、シベリアンパインと樹木の香料が、ほんの少しスパイシーな隠し味を添えて、ひたすら森林浴のように香り、植物の優しい甘さも醸し出しながら静かに収束します。

トップノート定番のレモンやグレープフルーツ、オレンジと言ったシトラス系は一切入っておらず、これはシトラスの傑作、オーダドリアンとは全くの別作品だと思い知らされます。オーダドリアンと異なるのは、レモンツリー、アイビー、サイプレス、シベリアンパインと樹木や植物が香りの大半を占めており、ウッディの作品であることが明確に示されているほか、オーダドリアンが躍動感ある動の香りとするならば、こちらは落ち着いた静の香りです。
それでも、共通の中心的な香料サイプレスが入っていたり、オーダドリアンにあったシトラスの爽やかさがレモンツリーで引き継がれるほか、主軸となっているシトラスノートが持つ甘さを、今回の主軸である植物から香っており、別作品でありながら正当継承したオマージュなのだと思わされる香りです。

さてテーマになっているハドリアヌス帝の回想録は、60歳になった皇帝ハドリアヌスが次期継承者であるマルクス・アウレリウスに宛てた書簡での回想でした。オーダドリアンが皇帝ハドリアヌスそのものの回想した人生を表したような作品に対し、ボワダドリアンは書簡を読んでいるマルクス・アウレリウスから見た偉大な皇帝へのハドリアヌス帝の姿なのだと感じました。
森林のように落ち着いて思慮深く、さりげない甘さは周りのものへの慈しみの心、賢帝と謡われるような偉大な皇帝そのものが表れているのでしょう。カミーユがオマージュした理由を想像すると、「ボワダドリアン(ハドリアヌスの森)」を大事なものを引き継ぐときにかいでみたくなります。



香水を愛してやまない某IT企業Webライター。
大学の頃にラルチザンのヴォルール・ド・ローズに出会い
衝撃を受けて以来、香水愛好家となって10年以上を経る。
そのため、IT企業でのライター経験を活かし、
愛する香水のことを発信するライフワークも始める。
初恋はラルチザンのヴォルール・ド・ローズで
今の恋人はFueguia1833のChamber。


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