香水の祭典「サロン ド パルファン2024」で押さえたい厳選フレグランス9本【前編】

こんにちは、香水大好きライターの凜です。8月は去ったというのに、残暑厳しい日々が続きますね。本記事では来月開催されるサロン ド パルファンでおススメしたいブランドと作品を合わせてご紹介いたします。

サロン ド パルファン参加の心得

さて、来月になると香水ファンならば誰もが心待ちにしているであろう(私も毎年楽しみにしております!)、年に一度の日本最大級の香水の祭典、サロン ド パルファンが伊勢丹新宿にて開催されます。

8月末にブランドラインナップの情報解禁が公式サイトでされてから、事前リサーチをすでにはじめられている方もいらっしゃることでしょう。実際に当日回るブランドや肌に付ける作品を吟味していることだと思います。
もし、情報に触れていくうちにこれだと感じた作品がありましたら、是非一度会期前に試すことをお勧めします。当日腕にのせられる香水の本数は限られますし、事前に確かめることで肌との相性の確認や、当日より多くの作品を試すことができます。

何より平日で伊勢丹新宿のクレジットカード会員限定の初日さえ、非常に混雑しており、落ち着いて試すのは難しいです。私も昨年、もし事前に香水を肌に付けて試していなければ、満足に回りきれなかったと思います。そのため、可能な限り事前に試すことを推奨いたします。


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サロン ド パルファンでおススメしたい香水9選

では、早速ブランドと作品をご紹介していきます。いずれも年に一度の祭典で購入候補となる香水として相応しい作品を中心にお届けいたします。

最初にご紹介するのは、奥行きがありながらも透明感のある繊細な作風が日本でも人気の高いメゾンフランシスクルジャンです。作品としては女性人気が高く薔薇の香水としても名高い「ア・ラ・ローズ」と、ウードのフレグランス傑作として大変美しい、「ウード」にいたしました。

1.ア ラ ローズ(メゾン フランシス クルジャン) 【フローラル/レディース】

 

香りのノート

Top
ベルガモット レモン オレンジ
Middle
センティフォリアローズ ダマスクローズ スミレ
Last
ムスク シダー

最初にお届けするのは、「薔薇を持つマリーアントワネット王妃」の肖像画からインスパイアされた、ボトル1本に400本もの薔薇を使用したローズ香水の名作、「ア・ラ・ローズ」です。マリー・アントワネット王妃がこの上なく愛し、肖像画にも描かれているセンティフォリアローズを250本、世界一香り良いとされることから薔薇の女王と謡われるダマスクローズを150本ずつ使用しています。フランシス・クルジャンが日本人女性のために調香した本作品は、女性ならではの柔らかさと優しさが内包され、とてもセンシュアルで清潔感もあります。華やかでありながら気品もあり、身に纏う人をまろやかに甘く包みこむような印象があり、マリー・アントワネット王妃そのもののように感じます。

トップから主役の薔薇、ダマスクローズは洋梨や桃を思わせるフルーティーな甘さ、センティフォリアローズは蜂蜜のような濃厚な甘さとそれぞれの異なる甘さがオープニングを奏でています。それでもベルガモット、レモン、オレンジと3種類の正統派なシトラスが重なるため爽やかで軽やかな印象で、馴染みやすく付けやすいローズ香水です。お日様の光を沢山浴びたローズが連想されます。

ミドルになるとシトラスは揮発して薔薇たちの甘さが強くなり、この上なくかぐわしく女性性が咲き誇るのに、スミレがパウダリーで可憐に香るからか石鹸のような清潔感も感じられます。エレガントでありながら少女のような大人でもある王妃様その人のようです。ラストになっても薔薇は美しく香り続け、スミレからバトンタッチを受けたパウダリーな石鹸に近いムスクとそっと添えられた樹木のシダーの奥行きのなか、自然と残り香までハーモニーを奏でます。

ア・ラ・ローズは薔薇の香水を1本持ちたい方やオールシーズン使いやすい最初のクルジャンをお求めの方にお勧めしたい作品です。お出かけやデート、ちょっとした御呼ばれの席でも勿論、オフィスにも自然と付けやすい作品でもあります。

 

2.ウード(メゾン フランシス クルジャン)【オリエンタルウッディスパイシー/ユニセックス】

シングルノート:ラオス産アガーウッド(ウード/沈香)、インドネシア産パチュリ、アトラス産シダーウッド、エレミ、サフラン

続いてご紹介するのは、黄金の彫像があしらわれた大理石の宮殿が佇むサハラ砂漠で、静謐な真夜中の満天に煌めく星空をイメージして作られた、ウード香水のウードです。特徴的なのはウード香水では異端の清々しい透明感を兼ね備えている部分と言えます。だから、重厚な黄金の彫像があしらわれた大理石の宮殿と静謐な真夜中の星空を同時にイメージしたということなのでしょう。一般的なウード香水は煌びやかな重たいダークさを深めた作品が中心で、例えるならばアラビアンナイトに出てきそうな豪奢で贅沢な黄金の宮殿です。ですが、クルジャンのウードは、冬の落ち着いた空気のなかで沈香が漂う静謐で神聖な寺院です。心に安らぐ静寂を与えてくれます。

ラオス産アガーウッド(ウード)が最初から重厚な存在感を感じさせるなか、インドネシア産パチュリの墨汁を連想させるような澄み切った静けさや、樹木でありながらもフレッシュなレモンが想起させる不思議なウッディーなエレミが交わり、クルジャンのウードならではの静謐さが生まれます。そこにウッディのなかでもスパイシーさが特徴のアトラス産シダーウッドと共に香辛料サフランが絶妙に絡むことで、スパイシーな甘さが異国の砂漠の砂塵が想起され、作品にユーモアを与えています。時間が経つとウードとパチュリの重厚さと静謐さが強調されていき、奥の方にあった甘さが際立ち始め、肌の匂いと一つになって色香が感じられます。ただし、気品や神聖さ、静謐さはあくまで崩れません。目を閉じると静寂に戻れるようなそんな香りです。

ウードは香料のウードがお好きな方はもちろん、敬遠している方にさえ一度はお試しいただきたい香りです。ウード香水の概念が崩れるでしょう。また、これからの秋冬の寒い時期に相応しい重厚さもあります。先にご紹介したア・ラ・ローズと対照的に人を選ぶ作品および非日常的です。なので人と被らない作品をお探しで、ドラマチックな体験をしたい方にもぴったりです。私も仕事で気を引き締めたい時に、異国の夜空や研ぎ澄まされた空気を味わおうとよく身に付けています。

以上、メゾンフランシスクルジャンの特におすすめしたい2本をお届けしました。

 


 

続いてご紹介するブランドは、創設者キリアン・ヘネシーの決して妥協なきこだわりぬいた品質を、ただお上品なだけではないアグレッシブでグラマラスな調香で我々を魅せるキリアンです。グルマン系をはじめとした甘さのある香りが得意な印象で秋冬に栄える作品が多いのもサロンドパルファンにピッタリです。今回は誘惑をテーマにしたキリアンらしい作品かつ、キリアンで最も売れている作品の「グッド ガール ゴーン バッド」と、永き中国の歴史で最も高貴な存在へと献上された最高級の茶葉へのオマージュの新作「インペリアル ティー」をお届けします。

 

3.グッド ガール ゴーン バッド(キリアン)【フローラル/レディース】

香りのノート

Top
金木犀 ジャスミン ローズ(メイローズ)
Middle
チュベローズ スイセン
Last
アンバー シダーウッド

3本目にご紹介するのは、清純な令嬢を人たらしの悪女へと堕落させるような魔性のフローラル、グッド ガール ゴーン バッドです。名は体を表すそのままの作品で、最初の爽やかな雰囲気に油断をすると、いつの間にか、虜になってしまうかも知れません。

トップは甘酸っぱいフルーティなお花の金木犀に、お茶にも使われる品種のジャスミンサンバック、ローズの中でも爽やかなメイローズと、フローラルなのに爽やかで優しい甘さです。そのため、言われるほど魔性の香りではないとお思いになられるかも知れません。ですが、ミドルになると一変します。

ミドルでは濃厚な甘さのチュベローズとミステリアスでパウダリーなスイセンが登場します。すると優しい甘さから暴力的な官能さに変化します。そう、good girlがbadに変わるように、トップの清純なイメージからミドルになると官能的な悪女のような香りになるのです。面白い部分はトップが全部消えて、ミドルが新しく登場したのではなく、トップで爽やかで優しい甘さだった金木犀、ジャスミン、ローズがミドルの濃厚なチュベローズ、ミステリアスなスイセンに融合して、魔性となるのです。このことは元々は純真だった女性が人を惑わす悪女へと堕ちるという証でしょう。かつては同じ人物だから、香りは塗りつぶされるのではなく、混ざって放つのです。

ラストはアニマリックなアンバーが中心で、魔性の香りを引き立て続ける伴奏のようです。そして、トップではあんなにフルーティーで優しかった金木犀も甘い花の香りに変貌しています。金木犀の変化が「清純な令嬢から人たらしの悪女へ」を成り立たせる大きな要素でしょう。爽やかなジャスミンサンバックやメイローズさえ、最早、魔性の花の香りです。

グッド ガール ゴーン バッドは間違いなく人を選びますし、オフィスでは使いにくく、香水ビギナーの方へはお勧めしにくい作品です。ただ、キリアンを代表する傑作であり、女性である喜びを感じたい方にはこの上なく相応しく、特別なタイミングには最大限にそのを威力を発揮します。

 

4.インペリアル ティー(キリアン)【ティー/ユニセックス】

シングルノート:ベルガモット、ジャスミン(サンバック)、グリーンティー、シーウィード(ラミナリア海藻)、ベチバー、ムスク

4本目の作品、そしてもう一つのキリアンの作品としてご紹介するのは、永き中国の歴史と伝統において最も高貴たる者に献上された最高級の茶葉を時を超えて現代に体現した、インペリアル ティーです。こちらも名は体を表しています。同じくキリアンから出ているティーの香水、「バンブー ハーモニーが夏向きの爽やかでふわっとした優し気な香り立ちなのに対し、こちらは豊潤でしっかりとした輪郭のある香り立ちが印象的な秋冬の雰囲気にも似合う作品です。

開幕から強い発酵した茶葉の香りが突き抜けて、茉莉花茶を思わせるジャスミン(サンバック)の爽やかな甘さとのマリアージュです。ただし、香料にあるグリーンティーではここまでの香ばしさは出せないと思います。グリーンティー=緑茶は殆ど発酵されていない茶葉だからです。どちらかというと烏龍茶のようなイメージが近いです。恐らくアーシーな大地のベチバーの香りの影響でしょう。またベチバーと同時に茶葉の中で最も発酵している紅茶のアールグレイの香りづけとして有名なベルガモットを使用することで、違和感なく「茶」を表現できているのだと思います。紅茶ではなくグリーンティーを茶葉の香料として選んだのは、フレッシュな発酵前の青さある香りも表現したかったのだと感じます。

シングルノートのため茶葉が豊潤に香り立つと、香ばしさは落ち着いてそのまま優しいムスクとクリアなシーウィード(ラミナリア海藻)に支えられて何にも混ざることなくティーの香りになります。まるで、茶葉を入れて注いで味わう時間のようです。短くても豊かな時間です。

本作のためにキリアン・ヘネシーが海を渡り、中国で茉莉花茶の製造手法を勉強する際、発酵された茶葉の上に何層にも白いジャスミンの花を乗せていく茉莉花茶の香りづけの過程を見て飲んだ刹那を、調香師カリス・ベッカーは表現しました。

インペリアル ティーは五感で時空を超えて花や果実、葉が織りなす茶の香り、旅路を表すような海と大地の豊かさを味わうことのできる作品です。老若男女問わず選びやすく付ける場をそこまで気にしなくてよいのに、ティー香水のなかで独自性もあるという、万能性のある香りです。ティー香水をコレクションしている方はもちろん、迷ったらおススメした1本に挙げられます。

以上がキリアンで特におススメしたい2作品でした。

 


 

続いてはフレデリックマルから3作品ご紹介いたします。フレデリックマルは「エディション ドゥ パルファム(香りの出版社)」をポリシーに掲げたブランドです。創設者フレデリックマルが編集長となって、各々の調香師が制約なく純粋な作品作りに専念できるようにしたため、フレデリックマルの香りは世間の受けや流行にとらわれず、芸術的です。ボトルにも作品名と調香師の名前が刻まれているほどの強いこだわりがあります。そんなフレデリックマルから厳選した3本、ドミニク・ロピオンが手掛けるブランド10周年記念の薔薇の香水、「ポート オブ ア レディ」、新たな香りを生み出す天才スージー・ル=エレを迎えてアクネ ストゥディオズとコラボしたパウダリーな桃とアルデヒドが主役のフローラル「アクネ ストゥディオ パー フレデリック マル」、モーリス・ルーセルの今までにあったムスクの概念を覆したフレデリックマルで最も売れている「ムスク ラバジュール」をお届けします。

 

5.ポート オブ ア レディ(フレデリック マル)【フローラル/レディース】

香りのノート

Top
ローズ クローブ ベリー ブラックカラント シナモン
Middle
パチュリ インセンス サンダルウッド
Last
ムスク ベンゾイン アンバー

5本目にお届けするのは、19世紀に書かれたヘンリー・ジェイムズの小説「ある貴婦人の肖像」から着想を得た調香師ドミニク・ロピオンがボトル一本に400本もの薔薇(トルコローズ)を使用したダークな薔薇の香水、ポート オブ ア レディです。同じ薔薇の香りでボトル一本に400本の薔薇、貴婦人(高貴な女性)の肖像というタイトルから、最初にご紹介したクルジャンの「ア・ラ・ローズ」を思い浮かべた方もおられるかも知れませんが、全くの別物です。クルジャンの「ア・ラ・ローズ」は正統派の女性らしい光のような作品ですが、本作はダークな影を帯びたような美しくて格好良い薔薇の香りです。

トップから主役の薔薇の香りがしますが、こちらは正統派の愛される薔薇ではなく、土を被ったような薔薇です。ミドルにある墨汁のような香りと言われているパチュリが強く出て合わさっています。ベリーやブラックカラントと果実がありますが決してフルーツのように甘くなく、イメージとしては赤ワインに使われるような雰囲気です。クローブやシナモンの香辛料もスパイスを加えていますが、明るくて軽やかという言葉からは程遠く、しっとりとしたダークな薔薇です。ミドルになると生花そのものの生々しい薔薇にインセンス、サンダルウッドとお香のような香りが混ざって、影のようなスモーキーな印象も強くなります。ラストはベンゾインの甘さはほどほどにムスク、アンバーが穏やかに香りながら、煙に巻くようにスッと燻るように物語の幕を閉じます。

モチーフとなったヘンリー・ジェイムズの小説「ある貴婦人の肖像」では高根の花の貴婦人が人生で一度の選択を間違えて、最も嫌うタイプの男のものになって、順風満帆の筈の人生に陰りを帯びます。そこから抗っていく貴婦人の物語です。人生の逆境で勇気が欲しい人に勇気を与えるような作品です。

ポート オブ ア レディは決して香水ビギナーの方には向かず、王道な薔薇の香水を探している方(そういう方はア・ラ・ローズ(メゾンフランシスクルジャン)をお勧めします)には合いませんし、間違いなく人を選ぶ作品です。香水にある程度慣れ親しんだ方や薔薇の香水でも落ち着いた香りをお探しの方、土を被った薔薇と訊いてピンと来た方には是非お勧めします。

 

6.アクネ ストゥディオズ パー フレデリック マル(フレデリック マル)【フローラルフルーティアルデヒド/レディース】

香りのノート

Top
アルデヒド ローズ スミレ オレンジブロッサム
Middle
バニラ ピーチ
Last
サンダルウッド ムスク フランキンセンス

6本目はアルデヒドを主軸とした桃が印象的のフルーティフローラルにしては珍しくパウダリーながら、同時にシュワっと炭酸のように弾けるような爽快感も感じられるという、フレデリック・マルが編集長として最後に手掛けた、そして、これまでにない作品を生み出すスージー・ル=エレーならではのフローラルフルーティアルデヒド、アクネ ストゥディオズ パー フレデリック マルです。

付けたてからミドルの桃の香りがダイレクトに芳香を放ち、青空のような爽快感がありながらもアルデヒドが魅せるサボンの香りもしっかりとして第一印象は現代的で元気で可愛らしい女性というイメージと思いきや、トップからそれだけでは済みません!トップにはローズ、スミレ、オレンジブロッサムという正統派で華やかな花々もあり、アルデヒドが織りなすサボンのパウダリー感とマッチするクラシカルな雰囲気や気品もあります。

ミドルになるとバニラの甘さも現れますが、ねっとりとしたグルマンのような甘さではなく、果実の桃の甘さと爽快感あるアルデヒドの隠し味のように温かい甘さをそっと添えます。ラストのサンダルウッドのインセンスのような甘さに優美なフランキンセンス、優しいムスクと重なるとやや落ち着きますが、最後まで主役は桃とアルデヒドです。むしろ、人間の体からも体臭として出るアルデヒドが元は動物のフェロモンでもあるムスクの色香を引き出して、さらなる作品の表情を見せつけます。そして、体臭と馴染んでその人の持つフェロモンを引き出すという、文字通り一言では言い表せない作品です。

香水で扱われるアルデヒドは炭素数が偶数か奇数かによって柑橘のような香りになったり、メタリック調な香りになったり、炭素数が大きいと石鹸のような香りになったり、合成成分ならではのユニークさがあります。単体では独特な脂っこい香りをして良い香りとは言えませんが、他の香料に混ぜることで絶妙な深みを与えます。合わせる香りによって涼し気になったり、温かみを強めたり、また、人の体からアセトアルデヒドとして排出される成分でもあるため、フェロモンのような色気に感じさせることもある、非常にミステリアスな香料です。

本作はそんなアルデヒドの持ち味を最大限に活かした傑作で、合成香料=絶対悪の概念を覆すような作品です。
余談ですが、アルデヒドは香水界において革命を起こした香料でもあります。当時は優しいパウダリーフローラルが主流でしたが、シャネルは香水初のアルデヒドを一緒に混ぜた作品№5を作り、今までにない香りは大ヒットしました。良い香り同士を混ぜればよいという当時の香水界の考え方に衝撃を与え、以後、合成香料を香水で積極的に扱うようになりました。その後、ニッチフレグランスが流行り、天然香料が重宝されるように回帰します。

そのため、本作は調香師スージー・ル=エレーの手腕は勿論、フレデリック・マルが最後に編集長として手掛けた集大成としても最高傑作と言える作品です。これまで香水界で数々の偉業を成し遂げたフレデリック・マル最後の作品がアルデヒドを主役に置いた意味を考えると、天然香料と合成香料に優劣はなく一緒に合わさることで至上の作品にもなることを、そして、モダン的な要素とクラシカルな要素も同時に実現することで、過去の香水の歴史とこれからの香水の未来を讃えた作品にも感じられます。

アクネ ストゥディオズ パー フレデリック マルはフレデリック・マルを愛するすべての方に、そして香水が好きな人ほど是非試していただきたい作品です。

 

7.ムスク ラバジュール(フレデリック マル)【オリエンタルスパイシー/ユニセックス】

香りのノート

Top
ラベンダー オレンジ ベルガモット
Middle
シナモン クローブ
Last
ムスク バニラ トンカビーン アンバー

7本目にご紹介するのは「身を焦がすムスク」という、フランス語のラバジュール(破壊)の意味で名付けられた、調香師モーリス・ルーセルが「最も女性の官能性を呼び覚ます香り」と称し、当時21世紀のムスクの概念が清楚なホワイトムスクに固定化されたことへの反逆から生んだ、本来のムスクのアニマリックな官能性に着目した、文字通りムスク(蔓延しているホワイトムスク)の破壊であり、身を焦がすムスク(自身の作品のムスクのこと)=貞淑な女性の破壊でもある、「ムスクラバジュール」です。

トップは柑橘系のオレンジとベルガモットに落ち着いたラベンダーのみという男性向けの香水でよく見られる始まり方。奥にミドルのスパイスにあるシナモンとクローブがちらついているのもより男性的に感じます。オレンジにベルガモットの持つ柑橘の明るさはあまりなく、ラベンダーという闇のなかに包まれて静寂です。オレンジやベルガモットはラベンダーと共に爽やかさに香ります。そこに危険な香りのスパイスが見え隠れするようなイメージ。ミドルまで行くとスパイスが火薬のように強くなり、ラストに近づく程、少しずつバニラとムスクが顔を出し始めます。バニラムスクは火薬のスパイスで焦げた甘さが強くなり、アニマリックさが暴力的になり、付けた人さえ昂らせる本当に身を焦がすムスクです。それでも本当の最後の方になると火薬のスパイスは抜けて、信じられないほど甘く優しく香り、とても美しくずっと嗅いでいたいと感じます。

ムスク ラバジュールはムスクがお好きな方や男性が夜遊びに行くときに付けるとドキッとするような作品です。また、男女問わず、寝る時に付ける香水として使うととても幸福感を感じられると思います。

 


 

最後に、今回のサロン ド パルファンへは出店はしませんが、今後の参考としてクリードから2本お届けします。クリードは創業260年以上の歴史ある英国最高峰のラグジュアリーフレグランスブランドでもあります。ヴィクトリア女王から王室御用達に任命されて以来、英国王室のチャールズ皇太子やキャサリン妃に、ハリウッドスター達と各界の著名人に愛用されています。日本でも2004年から長く人気を博しましたが2019年に撤退し、2023年に再上陸となり、注目を集めています。今回はすべての生命の芽吹きを慈しむような純白の香り「ラブインホワイト」、メンズラインで最も人気を誇り、ブランドを象徴する「アバントゥス」をご紹介いたします。

 

8.ラブ イン ホワイト(クリード)【ホワイトフローラル/レディース】

香りのノート

Top
オレンジゼスト アップル アプリコット
Middle
スイセン アイリス マグノリア ライス ジャスミン ローズ
Last
ムスク シダー

8本目にご紹介するのは春の芽吹きを思わせる白い花々と温かくてまろやかなライスが特徴的で、生きとし生けるものの命を祝福しているような、ラブ イン ホワイトです。

始まりはオレンジゼスト(オレンジピール)の朗らかな甘さとアップルとアプリコットの爽やかな甘さが春の訪れを祝福するかのように降り立ちます。最初からスイセン、アイリス、マグノリア、ジャスミン、ローズと白い花々のパウダリーな香りはしっかりとしており、瑞々しく、そして甘やかに優しく香ります。白い花が雪のように降り注ぐ景色が思い浮かびます。ライスのまろやかな温もりある甘さが柔らかく包み込み、ホワイトムスクの繊細さにつながるという、大変美しい香りです。

ラブ イン ホワイトは冬の空気が冷たく澄んだ時に試すと心が洗われるように感じます。遊びに行くときに付けるのも勿論素敵ですが、夜寝る前の一人の時間に付けると、誰にも言えない心の澱を包み込んでくれるような、そんな香りです。

 

9.アバントゥス(クリード)【シプレフルーティー/メンズ】

香りのノート

Top
パイナップル ベルガモット ブラックカラント アップル
Middle
バーチ(白樺) パチュリ ジャスミン ローズ
Last
ムスク オークモス アンバーグリス バニラ

前編の最後にご紹介するのは、ナポレオンの戦いと平和、そしてロマンスに情熱を捧げたドラマチックな人生をオマージュし、男性が人生を謳歌する姿を讃えた、アバントゥスです。

開幕から爽快なブラックカラントとベルガモットが登場し、パイナップルとアップルがフルーティーな甘さを感じさせながらもトップは瑞々しくフレッシュに香ります。付けた瞬間、いきなり快晴の青空のもとに連れて来られるような気分になります。それでいてミドルはウッディのバーチ(白樺)が男性らしい芯の強さ、墨汁のようなパチュリが威厳を感じさせながらも、ジャスミンにローズとエレガントさも忘れない。ジェントルマンな要素もしっかりとあります。前のめりに真っすぐとナポレオンが乗馬している、そんな光景が見えます。ラストは男性的な力強いオークモスにムスク、アンバーグリスと動物的な本能の香りが混ざり、さらに甘いバニラも加わるという、最後まで油断できない香りです。ロマンスに情熱を捧げる姿が目に浮かびます。

アバントゥスはナポレオンをオマージュした香りではありますが、明るく前を向いて真っすぐと自分の人生を進むすべての男性へのリスペクトでもあります。男性への贈り物としても、また女性がそんな男性からエールを貰いたい時に付けるのも素晴らしいと思います。

 

以上、サロン ド パルファンに向けてお勧めしたいフレグランスを前編9本ご紹介いたしました。来月は後編をご紹介いたします!お楽しみに。



香水を愛してやまない某IT企業Webライター。
大学の頃にラルチザンのヴォルール・ド・ローズに出会い
衝撃を受けて以来、香水愛好家となって10年以上を経る。
そのため、IT企業でのライター経験を活かし、
愛する香水のことを発信するライフワークも始める。
初恋はラルチザンのヴォルール・ド・ローズで
今の恋人はFueguia1833のChamber。


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